2027年施行予定の「育成就労制度」とは?― 企業に求められる新たな人材戦略

2024年6月の参議院本会議で可決・成立した新たな制度「育成就労」。これは現行の「技能実習制度」に代わる新しい在留資格制度であり、外国人の人材確保と人材育成を目的としています。制度の施行は2027年6月までに予定されており、今後多くの企業に影響を与えることが見込まれます。
「育成就労」制度は、企業にとっては安定的な外国人材の確保につながると期待されています。一方で、外国人労働者に対して新たに日本語能力の要件が課されるなど、企業側にも外国人への「日本語教育支援」など、新たな対応が求められます。
本記事では、「育成就労」の基本的な概要から、現行の技能実習制度との違い、導入によるメリット、今後予想される課題、そして企業が今後取り組むべきポイントまでを詳しく解説します。
新制度育成就労とは?企業が知っておきたい制度の基本
育成就労とは?
2027年に施行が予定されている「育成就労制度」は、外国人労働者の受け入れに関する新たな枠組みとして、現行の「技能実習制度」を廃止・見直しのうえ導入される制度です。本制度は単なる労働力の確保にとどまらず、「人材育成」を重視している点が特徴です。
主な目的は、日本国内の慢性的な人手不足に対応するとともに、外国人材に対して段階的な教育・訓練を提供し、日本企業で戦力として活躍できる人材を育てていくことにあります。育成就労のもとで外国人労働者は、3年間の就労・教育期間を経て、一定の技能・知識を習得することで、「特定技能1号」への移行が可能となります。
「特定技能1号」は、試験など所定の条件を満たせば、最長5年間の就労が可能となるもの。その後「特定技能2号」へとステップアップすることで、在留期間の更新制限が無くなるほか、家族の帯同や将来的な永住申請も視野に入れることができます。

出典元: 出入国在留管理庁・厚生労働省
育成就労制度の施行時点で、既に日本国内で受け入れられている技能実習生については、引き続き従来の技能実習計画に基づき、実習を継続することが認められています。この経過措置により、既存の実習生に不利益が生じることはなく、企業としては段階的な対応が可能です。
育成就労制度で対象となる業種
従来の技能実習制度では、90職種165作業と非常に幅広い分野で外国人材の受け入れが可能でした。しかし、育成就労制度では、対象業種が「特定産業分野」と原則一致することが義務付けられており、以下の16分野に限定されます。
①介護 ②ビルクリーニング ③工業製品製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業) ④建設 ⑤造船・舶用工業 ⑥自動車整備 ⑦航空 ⑧宿泊 ⑨自動車運送業 ⑩鉄道 ⑪農業 ⑫漁業 ⑬飲食料品製造 ⑭外食 ⑮林業 ⑯木材産業 |
つまり、従来は幅広い業種が対象だった技能実習制度に比べ、育成就労制度ではより産業政策上の人材確保が必要とされる分野に限定されている点が大きな特徴です。また、技能実習2号に該当していた職種のうち、特定産業分野に属するものについては、引き続き受け入れ対象として検討可能となっています。
企業にとっては、自社がこの16分野に該当するかを確認することが第一歩です。その上で、求められる技能やキャリアパスを整理し、将来の人材育成計画と合わせて受け入れを検討する必要があります。
育成就労制度における転籍の権利
従来の技能実習制度では、契約期間中に不満やトラブルがあっても、基本的に別の企業へ転籍することはできませんでした。そのため、外国人材にとって「働き先を選べない」状況が大きな課題とされてきました。育成就労制度ではこの点が改善され、以下のようなケースでは転籍が認められやすくなるよう制度が再設計されています。
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さらに、以下の一定の条件を満たせば、本人の希望による転職も可能となりました。
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この変更により、外国人材の権利保護が進み、働きやすい環境が少しずつ整備されてきています。
日本語能力の要件
育成就労制度では、新たに日本語能力に関する要件が設けられました。外国人材は就労開始前までに、以下のいずれかを満たすことが必要となります。
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この要件により、外国人材は一定レベルの日本語でコミュニケーションが取れることが前提となります。
管理・支援体制の強化
制度改正により、外国人労働者の受け入れを支える「監理団体」に関する基準が大幅に見直されます。これまでの技能実習制度では、監理団体が受け入れや支援を担ってきましたが、要件が不明確であったため、不適切な事例が発生するケースも見られました。
「育成就労」では、従来の監理団体に代わり、新たに「監理支援機関」が設置されます。受け入れ企業と密接に関わる役員の関与を制限することで、中立性・独立性を確保し、より健全な受け入れ体制を実現する狙いがあります。さらに、技能実習制度を担っていた「外国人技能実習機構」に代わり、「外国人育成就労機構」が新設されました。同機構は、育成就労外国人の転籍支援や、特定技能1号外国人への相談・援助業務など、新たな役割も担います。
また、転職希望者の増加を見越して、転職仲介に関する規制も強化されます。転職支援を行えるのはハローワークや監理支援機関などの公的・認可機関に限定され、民間仲介業者の関与は禁止されます。不法就労を助長した場合の罰則も厳格化されており、企業にとっても法令遵守の徹底が求められます。
制度変更の背景と従来制度との違い
背景
従来の「技能実習制度」は、主に国際貢献を目的とした人材育成に重点が置かれていました。具体的には、日本で培われた技術や技能を外国人に習得してもらい、その知識を母国の経済発展や社会課題の解決に活かしてもらう、という位置づけです。
一方、「育成就労制度」は背景が大きく異なります。少子高齢化の進展により、日本国内では幅広い産業分野で深刻な労働力不足が課題となっているため、制度の目的が「人材確保」と「人材育成」の二本柱へとシフトしました。つまり、育成就労制度はこれまでの国際協力的な側面を維持しつつも、より直接的に日本の労働市場のニーズを満たす制度へと進化したといえます。
技能実習生制度が廃止される理由
技能実習制度は長年運用されてきましたが、その仕組みにはさまざまな課題が指摘されてきました。主な問題点は以下のとおりです。
項目 | 技能実習制度(従来) | 育成就労制度(新制度) |
受け入れ体制 | 監理団体が支援を担うが要件が不明確で、不適切な事例も発生 | 監理支援機関を新設し、中立性・独立性を確保 |
転籍の可否 | 原則3年間は転職不可。不適切な環境に耐えられず失踪する事例も | 一定の条件下で転籍可能。キャリア形成を支援 |
労働者の権利保護 | 制度上の制約が大きく、労働者保護が不十分 | 権利保護を強化し、相談・援助体制を整備 |
キャリアパス | 実習終了後は帰国が前提で、日本での将来設計が不透明 | 特定技能への移行も可能となり、継続就労やキャリア形成が明確に |
制度目的 | 国際貢献(技能移転による母国支援)が中心 | 人材確保と人材育成の両立、日本の労働市場のニーズに対応 |
こうした課題を踏まえ、設立されたのが育成就労制度です。この制度では、転籍やキャリア形成を支援し、外国人労働者の権利保護を強化する仕組みを整備。さらに受け入れ体制の透明性を高めることで、外国人が安心して働ける環境をつくり出すことを目指しています。
企業が知っておくべきポイント
「育成就労」は、外国人労働者の権利保護を強化するだけでなく、企業にとっても人材戦略上の大きなメリットをもたらします。企業側が特に理解しておくべきポイントは以下の通りです。
ポイント | 内容 | 企業へのメリット |
人材育成の一貫性 | 育成就労を経て特定技能1号へ円滑に移行可能 | 長期的な雇用確保が可能になり、安定した人材活用が実現 |
転籍の柔軟化 | 労働条件の改善や転籍が認められやすい | 定着率向上のための環境整備が求められ、採用力・ブランド力も強化 |
人手不足解消 | 人材を計画的に育成・確保できる仕組み | 自社ニーズに合った人材を確保し、慢性的な人手不足に対応可能 |
日本語教育の義務化 | 入国時は低い日本語力を想定、企業が日本語研修を計画的に実施 | 業務理解・安全確保・定着率向上につながる |
特に日本語教育については、外国人材の受け入れ制度が見直され、企業側の「努力義務」として位置づけられる方向にあります。今後は、外国人材を採用する企業自身が、日本語力の育成に主体的に取り組むことが求められます。
新制度では、入国時の日本語レベルはA1〜N4程度(おおよそ小学校低学年レベル)と想定されています。しかし、このレベルでは業務上の指示や安全衛生に関する説明を十分に理解できない可能性が高く、労務管理や安全管理の観点からもリスクが残ります。
さらに、今後は入国後に100時間以上の日本語研修を企業が提供することが求められています。つまり、採用後すぐに現場投入するのではなく、日本語研修に要する時間・コストを企業側が計画的に確保する必要があります。
今後の問題点と対応策
問題点 | 詳細 | 企業に求められる対応 |
採用コストの増加 | 航費・交通費、日本語学習費、受け入れ体制整備費、送り出し機関への手数料などが発生 | 外国人雇用を見据えた予算計画の策定 が不可欠 |
早期離職のリスク | 新制度では転籍が可能。条件や労働環境が悪ければすぐに辞める可能性 | 労働環境の改善・定着率向上施策の実施が必要 |
福利厚生の整備不足 | 給与格差や生活環境の不備があると不満が増加 | – 外国人向けの福利厚生充実 – 給与水準を同等に- 生活しやすい雰囲気づくり |
日本語教育への対応不足 | N3取得が事実上必須だが、支援機関任せでは教育が不十分なこともあり、定着に課題 | – 計画的な日本語教育への投資 – 学習意欲を高める仕組みづくり(例:合格報奨金) |
外国人材の活用において、今後は日本語教育への本格的な取り組みが企業に求められるようになります。特定技能制度では、5年間の在留期間中にJLPT N3レベル以上の日本語力を取得することが事実上の必須条件となっており、これを満たせないと特定技能2号への移行ができず、日本に在留し続けることができません。つまり、N3取得を前提にした計画的な日本語教育は、企業の人材定着戦略に直結するのです。
しかし現状では、特定技能人材の受け入れを支援する登録支援機関や監理団体の中には、日本語教育に十分に力を入れていないところもあります。背景には、教育にかかるコスト負担を避けたいという事情や、N3取得後に特定技能2号へ移行すると管理対象から外れ、継続的な管理収入が得られなくなるといった業界構造が影響しているとも言われています。新しい人材を次々と受け入れた方が、支援機関にとっては収益性が高いという面も否定できません。
そのため、企業自身が主体的に日本語教育に投資する必要があります。例えば、N4合格時・N2合格時に報奨金を設定するなど、学習意欲を高める仕組みづくりも有効です。日本語力が向上すれば、業務理解や安全衛生の徹底、コミュニケーションの円滑化、そして長期定着にもつながるでしょう。今後、外国人材の戦力化を図るうえで、日本語教育は「支援機関任せ」ではなく企業が戦略的に取り組むべき投資領域となっていきます。
企業がこれから必要になってくること
新制度の施行により、外国人労働者を取り巻く環境は大きく変化します。企業側には、従来以上に「受け入れ体制の整備」と「人材育成への意識改革」が求められます。特に転籍が柔軟化することで、労働条件の透明性や従業員とのコミュニケーションの重要性が一層高まります。
育成・支援体制の整備
外国人材が安心して成長できるよう、研修プログラムの策定や職場環境の改善が欠かせません。OJTやメンター制度を取り入れることで、定着率向上にもつながります。
協議会への加入
特定技能制度と同様に、協議会への加入が必須です。他社との情報共有や制度に関する最新情報のキャッチアップを通じて、スムーズな受け入れ体制を構築できます。
適切な労働条件の提示
労働条件を明確にすることは、外国人労働者との信頼関係の基盤です。労働条件通知書をしっかり提示し、説明内容を記録することでトラブルを防止できます。
日本語学習のサポート
育成就労制度では、就労前にA1相当以上の日本語力が求められます。企業としても日本語習得を支援することが必要です。これらの取り組みは、日本語力の向上だけでなく、日常業務や人間関係の円滑化にも直結します。
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対応分野
- 特定技能16分野
介護/外食業/宿泊/農業/漁業/建設/鉄道/林業
自動車整備/航空/自動車運送業/飲食料品製造業
工業製品製造業/ビルクリーニング/造船・船用工業/木材産業 - その他分野
IT・エンジニア など
※将来的には、物流倉庫の管理・廃棄物処理・リネン製品の供給なども追加予定
対応言語(30言語以上)
🔹多言語での補助サポートすることで、入門〜初級者も安心して学習が開始できます。
英語 / 中国語 / スペイン語 / アラビア語 / フィリピン語 / カンボジア語 / ネパール語 /ミャンマー語 / モンゴル語 / スリランカ語 / インドネシア語 / ベトナム語 / … ほか多数 |
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